わにBLOG 日本におけるオルソケラトロジー第一人者である三井メディカルクリニック院長三井石根によるブログ


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宇宙医学


東邦大医学部で宇宙医学講座担当

後期7回14コマ
10月4日(水曜日)から、東邦大学の医学部で「航空宇宙医学」と題しての講座を担当しています。週に一回2コマの講義を計14コマ行います。すでに10月4日・11日の2回が終わり、明日18日が3回目です。

日本で宇宙医学の講座を持っている大学は殆んどないので、この講義はけっこう貴重です。私がNASAのエイムス研究所で研究してきた内容や、最近の最新情報を取り混ぜ、84名の学生さん達(この数はけっこう人気講座のようです)に宇宙医学の醍醐味を知ってもらうべく、前日は準備が大変です。

第一回目の講義では、航空宇宙医学の概要をお話しました。第二回目では人体が宇宙空間で受ける生理学的な影響について。そして明日の3回目は宇宙空間で人体がどのような形に変化していくかの形態学的な影響について話します。

スティーブン・スピルバーグの映画に出てくる宇宙人は、いずれも手足が細く胴長で頭デッカチです。ETにしても然り、未知との遭遇でも然り。でも彼の描くこの宇宙人のモデルは、宇宙医学の知見にみごとに合致しています。

宇宙に行くと、地上では重力によって下に引かれ下肢に溜まっていた血液が、無重力(専門家は微小重力と呼びます)によって上方にシフトし、首から上の血液量が豊富になります。実際の宇宙飛行士のデータでは足の血流の20%くらいが頭に上るので、足が細くなって顔がむくみます。

普通、宇宙で何の運動もしないでいると、ドンドン筋肉と骨が溶け出して手足が弱ってしまいます。しかし唯一頭骸骨のみは、頭に移動した豊富な血流によって厚くなります。だから手足が細くて頭デッカチなのは、宇宙医学からすれば極めて論理的な宇宙人の姿なのです。

ちなみに厚くなった頭蓋骨に加えて、宇宙に行けば髪の毛もフサフサ生えてくるはずです。これも宇宙に行ったら頭部の血流が増加することの効果です。地上では流行っている毛生え薬の作用は、そのほとんどが毛根の血流を増やすことを目的としています。宇宙に行けば自然に頭部の血流が20%もアップするのですから、宇宙に行くこと自体がそのまま「毛生え薬」になります。これはまさしく宇宙療法です。頭部の血流が増えれば、脳梗塞の治療にだって応用が利きます。

そして、宇宙に行ってしばらく滞在していると、身長が伸びていきます。足の長さが伸びてくれれば格好がいいのですが、実際には背骨が伸びるので胴長になっていきます。これは地上で重力に引かれて圧迫を受けていた脊椎が、宇宙ではその圧迫から開放されるためです。地球の重力下では、私たちの脊椎には体重のおよそ半分の圧力がかかっています。その圧力から開放されると脊椎のS字型の湾曲がなくなって、徐々に直線化してきます。それに加えて椎間板も膨潤するので、トータルではかなり背骨が伸びることになります。

背の高い宇宙飛行士では5センチ以上も(7センチ伸びたとの報告もあるほど)胴が伸びるとされていますから、かなりの胴長です。これもやはりスピルバーグのモデルに一致します。

でも、想像してみてください。背骨が急に5センチも伸びたら、けっこう大変です。実際、NASAの宇宙飛行士の60%もが、宇宙飛行中に何らかの背部違和感を覚えるとのデータもあるくらいです。

どうでしょう。宇宙に行ったら「手足が細く胴長で頭デッカチ」。ご納得いただけましたか?

さて、東邦大学での講義は今後もしばらく続きます。もしご興味がありましたら、ご連絡ください。特別聴講枠を作ってもらえないか、事務局に聞いてみます。ちなみに、講義のシラバスは東邦大学のホームページで参照できます。 来年もこの時期に開講する予定ですので、また近づいてきましたらお知らせいたしましょう。ちなみに、拙書「ヒトは宇宙で進化する」(ポプラ社刊)を読んでいただいても、きっと宇宙医学の面白さを堪能していただけると思いますよ。



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