わにBLOG 日本におけるオルソケラトロジー第一人者である三井メディカルクリニック院長三井石根によるブログ


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オルソケラトロジー


アルシさんシリーズ(その3)

きついレンズは百害あって一利なし! レンズ調整の重要性と遠隔医療。
今日が、インド人初のオサート患者「アルシさん」シリーズの最終日です。9月3日に日本に来日して3日目。もう今日は、アルシさん親子がインドに帰国する日です。

インド便は午前中のフライトなので、成田に向かう前に最終的な評価を行います。日本着のインドエアラインが大幅にdelayしたため、結局3日の日には診察できず、彼女は4日の夜に始めてオサートレンズを夜間装用し、昨日5日にその評価を受けました。もともとの裸眼視力(右0.05、左0.06)が、昨日は一晩の装用で右が0.8、左が0.7にまで改善していましたが、さらにもう一晩装用して今日どうなっているか、楽しみです。それに加えて、一晩装用したことでレンズがきつくなっていた状態を昨日調整して、レンズフィッティングに適切な動きを出したのですが、さらなる一晩の装用で、そのフィッティングにまた新たな変化が生じていないかも確かめなくてはなりません。オサートで十分な効果を出すには、それほど微妙な調整が必要です。

まずは、そのレンズフィッティングの検査。やはりさらなる一晩の装用で、昨日ゆるめたはずのレンズフィッティングが再びきつくなっています。実はレンズに使用する素材は4種類用意していますが、酸素透過性に優れた素材にするほどレンズは柔らかくなります。レンズが柔らかくなればなるほど、レンズと角膜は密着しやすくなるので、おうおうにしてレンズフィッティングがタイトに(きつく)なり易くなります。実は、アルシさんは円錐角膜という病的角膜なので、なるべく酸素透過性の高いレンズを選択したので、おのずからレンズフィッティングはきつくなってしまうのです。そのようなレンズ素材の特性も考慮して、レンズには最適な調整が加えられます。インドに帰国する当日の慌ただしい中でも、やはり2晩目のレンズフィッティングを観察したかったのには、そんな理由がありました。
 「レンズフィッティングがきつくなったらどうするか?」その解決法は簡単です。ただちにクリニック内で、レンズの最終カーブに調整を加えます。するとレンズと角膜の間に涙が入り易くなって、レンズの動きがスムーズになります。このように調整することで、レンズから角膜に作用する圧力バランスが最適化され、また涙が少なくて生じるドライアイの症状を抑えることができます。もしレンズがきつくて角膜とレンズとの間に十分な涙液の供給がなされないと、レンズによってこすれた角膜が障害を受けます。水分が少なくて乾燥した肌がカサツクのと同じです。きついレンズフィッティングは百害あって一利なしです。

さてさて、原理的な説明が多くなってしまいました(でも、こういう基本的な原理を理解せずにオルソK治療を行っているところが非常に多いと聞きますので、ご注意を!)。そんなわけで、アルシさんのレンズには、再び調整が加えられました。今度は、けっこう思い切った調整を加えます。なんせ彼女は今日インドに帰ってしまうのですから、中途半端な調整で、またきつくなってしまったら困ります。レンズの調整だけに日本に来てもらう訳にもいきません。「思い切った調整」と書いたのは、この調整作業の過程は、レンズを一度ゆるめたら元のきつさには戻せないので、慎重に段階を踏んで行う必要があるからです。ですから、この作業を行うとき、熟練した技術をもったクリニックの検査員でも、みんな非常に緊張して行っています。

だから、通常一回目の調整では、あまり思い切ったゆるめ方をしないのが一般的です。アルシさんの場合も、一回目の調整でゆるめすぎてしまったら、また同じレンズを作り直さなければならなくなるので、昨日の調整はちょっと控えめにしたのです。案の定、今日再びきつめのフィッティングになっていたので、更に加えた2回目の調整は、思い切った数値を設定して行いました。これによって、彼女のレンズには昨日にまして更に最適な(ちょっとだけ強くゆるめた)レンズフィッティングとなりました。これならインドに帰っても安心です。おそらく角膜に何の影響も与えずに、安全に夜間装用を続けられるでしょう。

さて、肝心の視力変化についてコメントするのを忘れていました。まず、右について。一昨日の0.05が昨日は一晩で0.8。そして今日の視力は0.9でした。左については一昨日の視力0.06が昨日は0.7。そして今日は1.0にまで改善していました。屈折値の方は、もともと7.00であった右の近視度・乱視度が一晩で2.50に、そして2晩では1.25にまで低下していました。左は4.50から2.00そしてさらに今日は0.75へともっと大きな変化です。この位まで屈折値が低下すれば、1.0見えるのも当然。もはや彼女の左の角膜には円錐角膜の形跡さえほとんど認められません。右はもう少し治療のステップがひつようですが。

レンズの調整も無事済んで、裸眼視力の向上と屈折値の低下も確認できて、これで晴れてアルシさん親子は安心して成田へ向かえます。三井メディカルクリニックでは、更に遠隔診療を実践しています。私がNASAで研究していた頃から、アメリカでは遠隔医療の試みがかなり大胆に実践されてきました。当時はまだ夢のような話であったロボット手術が、現在ではある程度普及してきていますが、もともとNASAには遠隔操作のノウハウが蓄積されているので、その医療応用としての遠隔医療は、実はNASAが得意とする領域でもありました。当時からそのような環境に身をおいていたので、日本に戻ってからこの診療を始めた時から遠隔診療の試みを常に念頭においてきました。加えて、当院の患者様方は遠方からもたくさんいらっしゃいます。飛行機や新幹線を使っていらっしゃる方々に、すこしでもその負担を減らしてさしあげたい気持ちから、このような方々には然るべき用具を提供して、遠隔診療できるように積極的にお勧めしています。現在では日本ばかりか、海外からも多くの患者様が受診されるので、遠隔診療の重要性はますます増してきました。インドからは今回のアルシさんが初めてですが、すでにアメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、香港、上海、北京、韓国、キプロス、イタリア、スイス、フランス、イギリス、ドイツ、ヨルダンなど、世界各国に居住する方々が、夏休みとクリスマスバケーションを利用して日本にいらっしゃいます。このような方々に対しては、レンズフィッティングを遠隔診療によって、ある程度診断できるようにしています。

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このような先端的な試みは、これからも、もっともっと取り入れていこうと考えています。いずれも、患者様の効果と安全性を保つために。そして、少しでも患者様の利便性に寄与できるように。



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