わにBLOG 日本におけるオルソケラトロジー第一人者である三井メディカルクリニック院長三井石根によるブログ


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オルソケラトロジー


アルシさんシリーズ(その1)

なんとアルシさん親子は、とうとう昨日はクリニックに現れませんでした。さすが噂に聞くインドエアライン。機体整備のため、ニューデリーの空港で10時間も待たされてしまったそうです。加えて飛行時間も余分にかかり、日曜日の朝8時台に着く予定が大幅に遅れて、彼女たちのフライトが成田に無事到着したのは、夜の7時。11時間のdelayによって、赤坂にたどり着いたのは、更に夜の10時近くになってしまったのです。当然、クリニックは終了しています。うちのスタッフが予約しているホテルで待機して彼らの到着を待ったので、幸いまったくトラブルはなかったのですが、日本での滞在が丸一日無駄になってしまって大変残念です。

インド人初のオサート患者、アルシさん来日。

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翌月曜日、私と同様に張り切って来院されたアルシさん親子と、久々の対面。すでに5月のインド訪問時にテストレンズを装着して、アルシさん専用のフルカスタムレンズをデザインしてあったので、今晩初めてそれを装用するのです。まさにインド人初のオサート治療のスタートです。

まずは出来上がってきている彼女専用のレンズを、実際に彼女の角膜にのせて、レンズのフィッティング具合を確かめます。このレンズは、世界にたった一枚しか存在しない彼女専用のレンズなので、基本的には最適なレンズフィッティングが図られているのですが、なんせ彼女の角膜は円錐角膜という病的な状態なので、デザインが本当にベストか否かは実際のレンズでのフィッティングを見て確かめなければなりません。

インドからはるばる来て下さった患者さんですから、「合いません」では済まされません。けっこう緊張しながら、アルシさんのレンズフィッティングを観察します。確認する事項は「レンズの位置と動き」そして「ブルズアイ」と呼ばれるフィッティングパターンです。アルシさんの場合、円錐角膜なので通常のフィッティングパターンとは多少異なるものの、けっこういい感じです。レンズもちょうど角膜中央に安定して納まっています。ただし円錐角膜特有のタイトな感じは否めないので、レンズの動きが乏しいのを何とかしなければなりません。

オルソケラトロジーにおいても同様ですが、レンズデザインが非常に繊細なオサートでは、圧力バランスの微妙な加減で、効果が大きく異なってきます。その適切な圧力バランスには、レンズの適切な動きが求められます。もしレンズの動きが乏しいと、まるでコルセットで胴回りを締め付けるのと同じように、無理な圧力のかけ方が影響して効果が出ないばかりか、涙液の循環を阻害して安全性を損ねる原因ともなります。とにかくレンズのタイトフィッティングは、この治療において「百害あって一利なし」なのです。

そこで登場するのが「ポリッシュ」。レンズのカーブを調整して、レンズにスムーズな動きをもたらします。米国では、オルソKを行うすべての治療院でこのポリッシュを行っていますが、日本でしっかりとこの技術を提供している所は極めて少ないようです。ポリッシュする技術がないと、タイトフィッティングが見られたら新たにレンズを換えるしかありませんから、その都度、患者さんには費用と時間がかかってしまいます。ポリッシュはクリニック内で直ちに行うので、この技術があれば、そのレンズをすぐに調整してそのまま使うことができます。しかも微妙な調整は、オンサイトで患者さんを目の前にして行うに限ります。そうでないと、レンズを換えても結局は患者さんの目に合わない可能性があるからです。

さて、アルシさんのレンズフィッティングは円錐角膜ゆえに、多少タイト(きつくてレンズの動きに乏しい)な状態と考えられました。そこで、直ちにポリッシュにかかります。いったんレンズをはずしてもらって、調整後に再び装着してもらったところ、今度は非常にスムーズなレンズの動きが認められました。でも、私はそれで満足しません。レンズの装用を開始する現時点で最適なフィッティングであるということは、おうおうにして、治療が進む過程で時間の経過と共に徐々にレンズフィッティングがきつくなっていくのが常だからです。今はいいけれど、インドに帰ってからレンズがきつくて外せないようでは困るので、念のためもう一段階調整を加えることにしました。

これで、今晩アルシさんはこのレンズを着けて寝ることになります。明日の朝一番に来院されて、一晩でどの程度まで彼女の円錐角膜が改善して、それがどのくらい視力の向上に反映されているかを確認するのです。きっと今夜、アルシさんは明日の効果に期待して、いい夢を見ながら寝ていただけることでしょう。

明日が、とっても楽しみです。



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